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『エピクロスの処方箋』―静けさの中にある“幸福”を見つめて

『神様のカルテ』シリーズで知られる作家・夏川草介さんの最新作、『エピクロスの処方箋』


前作『スピノザの診察室』の続編にあたる物語でありながら、今作だけでも心に深く響くテーマが描かれているようです。



エピクロスが示す“心の平静”


タイトルにある「エピクロス」とは、古代ギリシャの哲学者。

彼が説いたのは、派手な快楽ではなく、心の平静と苦痛のない状態こそが幸福だという思想です。


作中では、この考え方が医療現場に生きる登場人物たちの“心の指針”として描かれます。

誰かを救うという行為が、必ずしも成功や結果を意味しないとき、彼らはどう生き、何を信じるのか――その姿が静かに問われているように感じました。



医療と人間のはざまで


主人公の雄町哲郎は、大学病院での成功を離れ、妹を亡くした悲しみと、残された甥への責任を抱えながら地方病院で働く医師。


彼の前に現れるのは、過去に確執のあった教授の父親という難しい症例。

医療では救えない現実と、向き合わざるを得ない人の感情。


その中で彼が見つけていく「人としての在り方」が、この物語の軸になっているようです。



哲学が照らす生き方のヒント


本書の印象的な一節に、「快楽の本質は、精神の安定である」という言葉があります。


この一文を読むと、どんなに忙しい日々でも、心の中に“静かな場所”を持つことの大切さを思い出させてくれるようです。


医療という極限の現場を通して描かれるのは、実は“どう生きるか”という誰にでも通じるテーマなのかもしれません。




ページをめくるたびに呼吸がゆっくりと整っていくような物語かなと感じます。


誰かを助けること、赦すこと、自分を保つこと――そのすべてに“心の静けさ”という共通点があるように思います。


夜の読書時間にそっと開きたくなるような一冊。


エピクロスのいう“平穏な幸福”を、物語の行間の中に探してみたくなりました。


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