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さよならジャバウォック――“変わってしまった人”の正体をめぐる物語

伊坂幸太郎さんの最新作『さよならジャバウォック』(双葉社)は、結婚、妊娠、転勤――人生の大きな節目を迎えた女性の前に、ある日突然“別人のようになった夫”が現れるところから始まります。


25周年を迎えた伊坂さんが書き下ろした長編ミステリーでありながら、どこか現実の生活に潜む「変化」や「違和感」を映しているような物語です。



静かな異変のはじまり


主人公・量子は新婚の女性。


けれど、転勤先で暮らし始めた夫が、以前とはまるで別人のように感じられる。


優しかった人が、急に冷たくなり、暴言を吐くようになった。


そんな変化に戸惑いながらも、彼女は日常を保とうとします。


そしてある朝、浴室で夫が倒れているのを見つける――そこから物語は一気に動き出します。



“誰かが変わる”という怖さ


ストーリーの軸には、「変化する人間」という普遍的なテーマがあります。


相手の中で何かが変わる瞬間。


それは、愛情のかたちかもしれないし、環境かもしれない。


けれど、どんなに近い関係でも、その変化の理由を完全に理解することはできない。


この作品には、その“理解できない距離”の冷たさと切なさが漂っています。



伊坂作品らしい静かな緊張


過去の伊坂作品に共通する「会話の妙」「ユーモア」「予想外のつながり」は健在。


しかし今回は、それらが静かなトーンで、より現実的な恐怖の中に配置されています。


大学時代の後輩・桂凍朗という人物が登場し、「問題が起きていますよね?」と声をかける――


その言葉の裏に、伊坂さんらしい“謎の予感”が潜んでいます。



タイトル「ジャバウォック」に込められた意味


“ジャバウォック”とは、ルイス・キャロルの詩に登場する怪物の名前。


現実と幻想の境界に潜むものの象徴でもあります。


このタイトルに“さよなら”をつけたとき、それは恐怖との決別であり、愛の終わりでもあり、あるいは「自分の中の何か」を手放すという意味にも思えてきます。



日常の中に潜む“異世界”


伊坂幸太郎さんが描く物語には、いつも“現実の裏側”がある。


それは奇跡でも、運命でもなく、人の心の奥にひそむもう一つの世界。


『さよならジャバウォック』もまた、そんな静かな“異世界”を、私たちの日常の隣にそっと置いていくような作品なのかもしれません。


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